たいき

日記や考えたこと、面白い話を記録したい

弓道学科試験

弓道審査 学科試験

 


 あなたが弓道を始めたきっかけ、および弓道を通じて学びたいことを述べよ。

 


 私が大学の入学式を終え、会場大講堂から勇み足ででると、そこでは部活動やサークルのの勧誘が行われていた。二メートルを超える長大な弓を抱えた部員が多くの新入生に声をかけていた。元々武道経験があり、また、その時新しいことへの意欲に満ち溢れていたので見学に行く事にした。道場に着くと、一人の女性---先輩が見本として射を披露していた。弓を射るその瞬間だけでなく、立ち方振る舞い方、話し方、全てが美しかった。

「なあ、俺、弓道部、、、入るわ。」

入学式で隣の席だった友達歴1日目の田西に、先輩を見つめながら呟いた。正直、先輩が可愛かっただけである。連盟の先生方には申し訳ないが始める理由なんでそんなもんである。ちなみに、田西はあだ名もタニシで名前に負けない色黒天然パーマの男であった。

 それから私は正規練習や自主稽古に精を出し、自分で言うのも憚られるが、かなり上達した。試合では一年生にして大前を任され、経験者にも負けない的中率だった。当時の男子部長が礼法に拘りがあり、所作や礼法も身につけた。部長は弓道を何年やっていたのだろうか。規則正しい生活に完成された人間性。学ぶことが多いと感じていた。美しい所作をみてはそれを練習して真似た。

 その年の夏終わりに、衝撃的な事を知った。弓道部の規則に「部内恋愛禁止」と書かれているのだ。しかし、衝撃的なことはこれではない。部長と憧れの先輩が恋仲にあるらしいのだ。弓道の上達が先輩へ近づく道だと考えて稽古に没頭していた私は、部長と先輩の恋愛関係にあるなんて全く気付かなかったのである。

 私は失恋も相まって、先輩や部長、そして弓道が示す精神性に疑いを持った。

「部の規則破ってんじゃん。」

タニシは私を擁護してくれた。しかし、もうあの時弓道に見出した美しい世界には興味がなくなってしまった。なあ、弓道、学びたいよ。先輩の心を射貫く方法を。